伊藤ひろたか

バランスシート不況に対する素朴な疑問

2008年 07月 24日

言わずと知れた野村総合研究所のエコノミスト、リチャード・クー氏が上梓した「日本経済を襲う2つの波」。サブプライム危機とグローバリゼーションの行方という副題がついています。大変興味深く読ませてもらいました。


同書で、クー氏はバランスシート不況についてかなりの紙面を割いて説明しています。クー氏の自説であるバランスシート不況とは、「株価や地価の大幅下落が生じた結果、家庭のバランスシートが傷つき、それを修復しようと貯蓄に励むようになる。企業も家庭もバランスシートの修復に向かうため、政策金利を下げても、市場にお金の借り手がいなくなり、不況が長引く」というもの。


企業はともかく、個人消費者の場合、家庭の会計は簿価評価(おそらく、金融の専門家をのぞけば、多くの人は感覚的に簿価で考えているでしょう)なので、その点からの考察が欲しいというのが個人的な感想です。


個人的な感想はさておきまして、クー氏が唱えるバランスシート不況が日本が直面した、そして今アメリカが直面している不況の正体だと仮定したとして、その影響は相当長引くのではないかと感じます。なぜかというと、バランスシート不況のあおりを最も受けるのが30代の世代であるからです。


1990年代後半、バブル崩壊直前に家を購入した30代サラリーマンのケースを考えてみましょう。あれから20年が経過し、地価の幾ばくかの回復と減価償却、借入金の返済を済ませてきた結果、確かにバランスシートは元に戻ったでしょう。しかし、ローンを組んだ時、サラリーマンは退職金を当て込んでいるはずです。この20年間、日本経済は大きな痛手を負い、当時想像していたのとは全く異なる時代になってしまいました。そう、所得が右肩上がりに増えなくなったわけです。そうしますと、当時想定したほど、退職金がもらえない可能性が高いのが現状です。


これから団塊の世代の引退が始まり、退職金を含めたマネーに産業界は期待を寄せています。しかし、退職金を含めた団塊マネーは当初見込まれたほどはないのではないか、というのが私の素朴な疑問。つまり、バランスシート不況は地価や株価が下落した、その時だけでなく、下落時にローンを抱えていた世代が引退する際に、もう一度、日本経済に大きな影響を与えるのではないでしょうか。


私は経済の専門家ではないので、全く検討違いのことを指摘しているのかもしれません。ただ、もし自分がローンを組んだ立場であれば、上記で述べたような事態になると感じるのです。そういう中で、高齢化が進み、医療費、福祉費がどんどんと増えていく。今さら遅いのですが、バブルに踊ったツケはまだまだ続きそうな気がしてなりません。

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