ボードゲームを通じて論理的思考、リソース管理を学ぶということ

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「あんな授業があったら学校がもっと楽しくなるのに!」。今回、中山地区センターで開催した、世界の教育を体験しようシリーズの第1回「ボードゲームを使った教育プログラム」に参加した方から、当日頂いたメールです。体験学習会を終え、地区センターから中山駅へ帰る道すがら、お子さんがそう言っていたそうです。

さて、今回企画したボードゲームを使った教育は私がかねてから、その可能性をブログでも触れてきたところです。ただ、こればかりはどれだけ口で説明しても、伝わりにくい。百聞は一見に如かずだと思い、実際に体験して頂こう、触れて頂こうと思い、ボードゲームを使った教育プログラムを開発しているマインドラボ社様にご協力頂いて実現にこぎ着けたのが今回の企画でした。

普段の学校と違い、今回の企画は1つ大きな難所がありました。それは地区センターに集まる子どもたちがお互いに初対面であるということ、そして学年もバラバラだということ。この状態の中で、わずか2時間という限られた時間の中で、子どもたちにゲームを理解してもらって、かつ、先生と子どもたち、あるいは子どもたち同士の対話を生み出すというのは、ちょっと考えただけでも難しい状況であることはお分かり頂けると思います。しかも、周りでは保護者もその様子を見学しているという状況。

まず、マインドラボ社の講師から子どもたちへの投げかけが始まりました。子どもたちも緊張しています。
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この状況でゲームのルールを理解してもらうのはなかなか大変ですが、子どもたちと対話をしながらゲームを理解してもらいます。この対話は見事です。少し再現してみましょう。こんな感じです。

「ここに一カ所、壁がない場所があるよね。ここから赤い車を外に出すのが、このゲーム。車は前か後ろにしか進めないよ」。そういって、まず、盤の上に「赤い車」だけを乗せた状態を子どもたちに見せます。「分かった?」。
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「じゃぁ、聞くよ。この青い車はどっちに動ける?」。先生は子どもたちに答えてもらいます。この辺はまだ簡単。「右ー!」とか「左ー!」という声が上がります。「そうだね、青い車は右と左に動けるね」。
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子どもたちも理解を確認するため、今度はこういう状態を見せます。「じゃぁ、この水色の車はどっちに動かせる?」。
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ここまでで車を動かすルール、要は前後にしか動けないというルールを子どもたちに理解させ、最後にこれを見せます。「はい、このゲームはこの状態でなんとか車を動かして、赤い車を外に出すゲームです」。
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「さぁ、じゃぁ、ゲームをやってみようか」。先生の一言で、2人1組になってゲームが始まります。この時点では正直、保護者の方も戸惑っています。ただ単にゲームをやるだけ?と思った保護者の方も多かったと思います。それでも子どもたちは楽しそうにひとしきり、遊んでいます。
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少し時間が経ったところで先生が声を掛けます。ここからがボードゲームを使った教育プログラムの真骨頂です。「赤い車を出すために、何(どの車)が邪魔しているのかな?」。「赤い車を出すためには黄色の車はどこにないといけないかな?」。先生は子どもたちに問いかけ、子どもたちも手を挙げて次々に答えます。「間違ってもいいんだよ。どう思うか、それはなぜか教えて」。子どもたちが考え、自発的な発言を促します。ゲームという事もあって、みんな、積極的に答えます。とても、そこにいる子どもたちが初対面とは思えませんし、何より周りで保護者が観ている緊張感の欠片もありませんでした。

「よし、じゃぁ、もう一回やってみよう」。「何がゴールを邪魔しているのか、それを問いかけながらやってみよう」。先生の説明と、この一言で子どもたちの様子が一変しました。周りで観ていた保護者の方も興味津々です。これはラッシュアワーというゲームですが、論理的思考力を養うのに大変役に立つゲームです。もちろん、ただ単に遊べばいいものではなく、先々の状態遷移を意識させてあげる気付きを与えてあげること、ゴールの状態からバックキャストして考えることなどを意識して、子どもたちに言葉を投げかけてあげることが大事です。
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会場で保護者の方に感想を聞いてみましたが、「先生の問いかけ一つで、あんなにも子どもたちの考え方が変わるのに驚いた」「先生のファシリテート能力って本当に大事なんですね」など、様々な反応がありました。このゲームはご家庭でも簡単にできるので、ゲームを通じて親子の対話と論理的思考力の養成ができて、一石二鳥だと思います。

次に体験したのがピロス。この時点で既に授業が始まって1時間が経過。子どもたちの集中力は途切れません。そして、既に授業に惹き込まれている子どもたちはピロスのゲームのルールを説明する先生のところに、かぶりつています。
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このゲームはちょっと説明が難しいので詳細は省きますが、こちらは通常、何時間か掛けて取り組むゲームなので1時間という限られた中で少々、難しかったかもしれません。それでも子どもたちは楽しそうに取り組んでいましたし、こちらはリソース管理を学べるゲームです。
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論理的思考や推論、リソース管理など社会人にとって必須の能力ですが、小学校や中学校、高校はおろか、大学にすらこれらの能力を涵養する教育プログラムはありません。ところが海外はこれらの能力を養うためのプログラムが小学校の時から存在するのです。

ボードゲームを利用した教育プログラムを教育現場に導入していくのは、正直ハードルは高い。特に横浜の場合は学校が512校もありますから、教材費はどうするのか、あるいは総合学習で取り組むにしても時間をどう確保するのか、課題は山積です。その点、私立は学校の経営者の判断一つで導入できるので、都内の私立小学校や関西の私立小学校などで導入が始まっています。

知識を習得するためのプログラムは学校、塾など様々な場面で用意されていますが、こうした「考える力」を身につけるプログラムはまだまだ少ないですし、何より楽しみながらできるものとなるとかなり限定されます。今回こうした体験学習会を開催した一つの狙いは、ご家庭でも取りんで頂けることがあるということを保護者の方に実感して頂くことでした。ちょっとした工夫で、子どもたちに考える力を付けてあげることが家庭でも出来るのです。

「なぜ?」「どうして?」という投げかけから対話が生まれ、言葉が紡がれていきます。そして、その中で自分が今本当に分かっていないことが分かります。子どもたちの日常を見ている保護者や学校の先生がこのゲームを通じて対話ができるようになることには大きな意味があります。子どもたちにはそれぞれ個性があります。当然、考え方、思考にも癖があります。そういう癖を気付かせてあげること、いい所は伸ばせばいいですし、悪い所は気をつければいい。自分の思考の癖を理解しておくことが大事です。

ボードゲームの教育効果は極めて高いと私は思っています。今回の取り組みについては中央区の青木区議や相模原の五十嵐市議も関心を持ち、参加してくれました。