1年半の育児休暇から見えた、新しい働き方【後編】

伊藤

やっぱり、車。それはたぶん、非常識じゃないです。車に頼っている男性は多い気がします。あの揺れが・・・・心地よい眠りに誘ってくれます。

鈴木

まず、午前中は公園とかで思いっきり遊ばせるんです。僕も一緒になって。それでお昼ご飯を食べさせて、おなかがいっぱいになると、昼寝の準備完了です。この状態で車に乗せて、5分も走れば、ぐっすりです。寝たら、車から降ろして、ベッドに寝かせて、僕は机に向かう。段々、車はエコじゃないなぁと思って、ベビーカーに切り替えました。娘はベビーカーが嫌いだったんですけど、そこは我慢してもらって。

伊藤

うちの子は寝かしつけるのは難しかったなぁ。お母さんの母乳がないと寝なかったんですよ。3歳になるまで、ずっと。

鈴木

うちもそんな感じでしたけど、でも、昼間はお母さんがいないということを理解していたんでしょうね。じゃぁ、伊藤さんは寝かしつけたことはない?

伊藤

僕の手ではないですね。寝てくれなかったです。車は使いましたよ。でもね、うちは寝付きが悪くて。車といっても、保土ヶ谷バイパスを使いました。

鈴木

えっ?バイパス??そりゃぁ、ドライブになっちゃいますね。

 
伊藤

そうなんです。若葉台からバイパスに乗って、南本宿辺りで寝てくれましたね。そこから環状2号に乗って、三枚町経由して、鴨居、中山と自宅に戻る訳です。

鈴木

うわぁ・・・・。そりゃぁ、大変だ。

伊藤

うちの子はアトピーもあったから、寝ていて体温が上がると、身体がかゆくなっちゃって、それで起きちゃうという悪循環もあって、ちょっと大変でした。

鈴木

なるほど。あ、でもね。どこにも子どもを預けずに僕一人で子育てをしていたのは、最初の半年だけです。身体が持たなくて、保育園を使いました。一時預かりの制度を使って。昼間、子どもが昼寝をしてくれても、夜がありますからね。冒頭に申し上げたように、僕が育児休暇を取っている1年半は僕がフルで子育て、家事をやるというのが妻との約束だったので。

 

ブランコで酔った経験ありますか?

 

 

伊藤

うぅ。それはちょっと厳しい。

鈴木

はい(笑)。で、身体を壊しちゃったんですよ。昼間、子どもが昼寝をしてくれても、夜がありますからね。子育てしながら、公認会計士の勉強をしていましたから。私が育児休暇を取っていた1年半は子育ても家事も全部、私だったので。こどもは容赦ないですし。子どもが起きている間は一緒に遊んで、寝ている間に、掃除・洗濯・ご飯の準備をしながら、公認会計士の勉強でしたので。空が白むまで起きていないと勉強時間が確保できなくて、それで身体を壊してしまいました。

僕も初めての体験だったんですけど、ブランコで酔っちゃうんですよ。寝不足が続くとブランコで酔う。こんな生活のリズムだと、ブランコの、あの揺れで酔うし、吐き気を催す。娘がブランコに乗りたいと言えば、そりゃぁ、一緒に乗ってあげないといけないですからね。

これは耐えられないな、と思っていたところ、妻の友人が助けれくれたんです。子育てについては徹底した平等主義の妻だったのですが、妻の友達が僕の状況を聞いて、「旦那さん、死んじゃうよ」って。「保育園に預けられるのであれば、預けた方がいいよ」というアドバイスが妻にあったみたいです。この助言がなかったら、僕は公認会計士の試験には間違いなく受かっていなかったですね。

 
 
伊藤

それで一時預かりを利用したわけですね。一時預かりはどうでしたか?

鈴木

昼間の時間が全部、自分のために使えますからね。それは良かったです。9時から17時まで。それで夜もちゃんと睡眠時間が確保できるようになりました。ただ、一時預かりは高いですね。1日3000円。

一時預かりを体験した分かったことは、横浜市の保育行政は思っていた以上にいいな、ということです。待機児童とか騒がれているけど、少なくとも一時預かりは隣の川崎市なんかより、ずっといい。

伊藤

どういうことですか?

鈴木

横浜市の場合、保育園の体制が出来ているんですよね。それはハードだけでなく、ソフト面においても。川崎市などは、私が聞いた範囲ですけど、保育園そのものが「保育園に子どもを預けることがけしからん」と考えている所が多いようです。もちろん、そういうことを保育園が口にしている訳ではなくて、態度だったり、言動だったり、言葉以外の部分で保護者が感じていることなんですけどね。横浜市の場合は、そういうことは全然なくて、預ける側のことをちゃんと理解してくれているな、と感じました。

伊藤

さて、一時預かりを利用して、週に2回、子どもを保育園に預けることで時間が出来たわけですけど、そこを公認会計士の試験勉強に使った訳ですね?それでも、他の人に比べると勉強時間は少ないように思いますが?

鈴木

一日6時間を勉強時間の目標に設定していました。当時、毎日記録を付けていたんですけど、今、改めて振り返ると、平均勉強時間は4時間ちょっと。自分が体感してたほどは勉強出来ていなかったですね。

子育てとの両立という難しさはありましたけど、勉強があったことで、逆に生活のリズムがしっかり作ることができました。べんきょうの種類が中学受験に似ているんですよ。基本的には塾の言っている通りに勉強するのが一番効率的なんです。あまり思索にふける要素はなくて、無心に手を動かせという世界です。それが公認会計士になるための勉強方法。やることがきっちり決まっているんです。後はどれだけ続ける根性があるか。それだけ。

それと公認会計士の仕事ってビジネスマンの日常の仕事と親和性が高いのが特徴です。会社勤めを経験していない大学生にはツライ勉強だと思いますけど、社会人であれば、経験がそのままテストされるので、意外に楽です。既に何割か知っている、体験している仕事を試験で問われるので、社会人向きの資格ではないでしょうか。

働き方が変わる時、仕事の質が向上する
 
伊藤

本当は合格するまでの取り組みとはもっと色々とお聞きしたいのですが、今回のインタビューの目的は育児休暇で経験したこと、感じたことを語ってもらうのが目的なので、割愛します。もう少しちゃんと聞きたいんですけど。このインタビューもそろそろ終わりにしたいのですが、1年半の育児休暇を終えて、現場に復帰した時に感じたことを教えて下さい。

鈴木

そこ、ですよね。世の男性が一番聞きたいところでしょう。僕が一時休暇を取ったのが2008年春。そしてリーマンショックがあったのが2008年9月。リーマンショック後、インターネットから得る海外の情報を見ていると、とにかく世界経済が大変なことになっていたわけです。これはいよいよ、日本経済もどうなっちゃうんだろう、と。

ところが、です。2009年6月に会社に復帰した時、変わっていなかったんですよね。1年半前と。自分は浦島太郎状態だろうな、と不安に思いながら、復帰したのですが、何事もなかったかのように、普通に仕事を再開できました。ニュースで見る限り、世界では大変なことになっていたはずなのに、何も変わっていなかった。恐ろしいくらいに変わっていなかった。

伊藤

育児休暇を取得しても仕事に差し障りが生じないという意味ではグッドニュースですけど、日本経済が停滞している現状にあって、その側面から見ると喜ばしい話ではないですね。

鈴木

その通りです。何か、その辺に日本の病巣が隠れているように感じます。世の中の動きは、少なくとも世界の動きは速いはずなのに、なのに・・・・・って感じ。さっき、iPhoneを例に創造的な仕事をするために働き方を変えなくちゃいけないんじゃないかって話をしましたけど、それとも相通じるのではないでしょうか。

伊藤

最後に。改めて子育て、家事を奥様と完全に応分負担にしてみて感じたことはありますか?

鈴木

最初はね、やっぱり戸惑いましたよ。けど、ゼロベースで考えてみると、妻が言うことも最もだなと思います。お互い働いているわけですから。妻から主張されてはじめて、気付きました。海外では当たり前なんでしょうけどね。

そして何より男性も子育てしながら、仕事が両立できるんだってことを実感できたのが大きいです。会社に復帰した後も、以前に比べて子育ての時間が取れるようになったんですよ。公認会計士の試験の合格したのは、会社に復帰した後なんですね、実は。試験前は仕事も勉強も子育ても忙しかったはずなのですが、逆に仕事が丁寧でした。だって、仕事でミスをしたら、その分、勉強の時間が削られちゃうわけですから。

残業時間の減少=勉強時間の増加、なんです。だから仕事でミスをするわけにいかない。自分の中に経営者としての鈴木、つまり「勉強時間を確保しろよ」と命令する自分と、「いやいや、仕事にこれだけの時間は必要なんだよ」と主張する労働者としての鈴木、二人の鈴木が存在していました。相当綿密に仕事の段取りをして、短い時間でアウトプットを出すようになって、結果的には勉強時間も確保できたんです。

同じようにやれば、子育ての時間も確保できるなと思います。それは育児休暇を仮に取らないとしても、今の生活のリズムの中で子どもと触れ合う時間を作れるし、仕事にもいい影響が出るのではないでしょうか。