私の葛藤と「間を行く」勇気

いつしか、政治の世界も「YESか、NOか」をはっきりと表明しないといけなくなりました。小泉さんの郵政解散選挙がその分岐点だったのでしょう。けど、実際にYESかNOかを明確に言い切れるような事象は少なく、その間に解があることの方が多いのが現実です。

メディアの影響もあって、「間っていうけど、結局、あなたはYESなの?NOなの?」と問われるのは、なかなか難しい状況です。説明の十分な機会があれば、あるいはメディアが十分に報道してくれればいいのですが、そこにも課題があります。

具体例を挙げてみましょう。今、横浜市では新市庁舎建設の是非が議論されています。新市庁舎の建設は「YESか、NOか」。一見、分かりやすそうなテーマですが、実はそれほど簡単なことではありません。結論から申し上げれば、私の答え(私の答えであって、会派の答えではありません)は、YESとNOの「間」です。

どういうことか。建設はあってもいいけど、今の市が提示している案はとんでもないということ。「資金」「災害へのリスク」「まちづくり」の3つの点で課題があります。

まず、現庁舎の課題を整理しましょう。2つの問題を抱えています。1つはオフィスが分散していることによる業務の非効率、もう1つは分散先のオフィスの耐震性に対する不安。この2つの問題をどう解決するか。市庁舎の建設に「NO」というだけでは、この問題を解決できないのは自明です。

一方で、市が提案している案。高さ140m、30階の高層ビルを建てて、そこに市役所機能を集積するというもの。私はこの案も「ないな」と思います。まず、資金的に非常に厳しいこと。建設費だけで約630億円、いくつかの想定が崩れると市の負担は1000億円を越えてしまいます。

災害にたいするリスクも実は危うい。3.11の記憶は新しいところですが、あの時、東京の湾岸エリア、あるいは武蔵小杉などの高層マンション群では何が起きたか。電気が止まり、水が使えなくなり、灯油タンクに水を詰めて、20階、30階の階段を必死な思いで上り下りしました。あの経験に懲りて、高層マンションを売却した人も数多いと聞きます。市役所の機能を本当に1カ所に集約して大丈夫なのか。万が一、万が一、その高層タワーが丸ごと機能しなくなる事態が発生した時に、横浜市はどうなってしまうのか。建物が崩壊することはないでしょうけど、別に建物が壊れなくても、機能ストップが発生し得ることを学んだのが3.11だったはずです。

そして、まちづくり。新しい業務地区としての「みなとみらい」とオールドタウンとしての「関内」のトータルのまちづくりの中で、市庁舎をどう位置付けるのか。そこも現案だと、はっきり言って、とって付けたような案になっています。

そもそも。前述した2つの課題を解決するために、一カ所に集積するという発想自体がどうなのでしょうか。先日の本会議で市長は現庁舎はあと50年は持つ、使えることを明らかにしました。50年前に建設された現庁舎があと50年「も」使えるというのです。つまり建設時から100年は使える庁舎ということです。

先に述べた2つの課題を解決するために、必要なことは分散した、耐震性に不安が残るオフィスに入居している市職員の分の床「だけ」を整備すればいいのです。それも現庁舎の近くに。そうすれば、地震への不安は解消されますし、業務の非効率も解消されます。かつ、まちづくりの視点から新庁舎を位置付けることもできます。オールドタウンの関内を捨てる必要もないですし、資金的にも少なくて済みます。何より市役所が一カ所に集約されていないことが災害へのリスクヘッジになるでしょう。何かあっても、どちらかの庁舎が生きていれば、業務は続行できます。

私はこういう考えなので、建設に「YESか、NOか」と聞かれれば、「YES」なのですが、しかし、現在の市が提示する案には明確に「NO」なのです。もっと資金をかけずに、災害へのリスクもヘッジして、まちづくりの視点でも魅力的なものができるはずです。横浜市の北仲案にこだわる必要はどこにもありません。

今後の市庁舎建設は50年後、100年後の横浜を形作る、大変重要なプロジェクトです。だからこそ、高層タワーに市役所機能を集積するという古い発想では、横浜らしさは感じられないし、外からも「横浜ってそんなものか」とバカにされてしまうと思います。

一つの具体の例として市庁舎問題を取り上げましたが、「間を行く」勇気。政治はYES、NOを言い切れるほど、そんなに簡単な問題ではありません。私が日々、街頭演説で「1週間のうち、1分でもいい。どうか、横浜市政に関心をもって下さい。自分の区から選出されている議員(私以外も含めて)のホームページを見て下さい」と訴えている理由でもあります。