横浜版戦後レジームからの脱却としての行政のイノベーション

横浜市の公園行政が横浜だけでなく、日本の公共空間を大きく変えるかもしれない。2016年12月22日の日経新聞にこんな記事が載っていた。「横浜市は市が管理する全ての公園を対象に、活用アイデアを市民や企業から募る。事業者から公園使用料を集め、賑わい創出と管理費負担の軽減を狙う」。
 

公共空間のリノベーションは私が3年ほど前から議会でずっと訴えてきた政策テーマ。3年前、議会で初めてこのテーマを持ち出した時の横浜市の反応は「なんですか、それ?」というものだった。公園は管理の対象、そこを民間企業に積極的に提供して、地域の賑わいを作り出したり、その経済活動の中から公園の維持管理費を民間企業に担ってもらうという考えは、「公園は管理するもの」という発想の行政からすると、突拍子もない提案に見えたのでしょう。

 

そう見えたとしても不思議ではなかった。だから、このテーマで議会で質問しようとしても、答弁できる部署がなくて、横浜市サイドはいつも頭を抱えていた。結局、最後にお出まし頂くのは、ある意味、なんでも屋といってもいい、政策局政策課だった。

ただ、私には確信があって、公共空間のリノベーションができれば、お金の流れが変わる。これまで指定管理者制度を導入したとはいえ、基本的にお金の流れは行政から民間へ。従来の直接管理の時代に比べれば、公園の維持管理費を抑えられるとはいえ、お金の流れは変わらなかった。人口減少と高齢者人口の増、という社会の変化を考えれば、次第にこうした公共空間・公共施設の維持管理費の財源を捻出するのが難しくなるのは時間の問題だ。個人市民税への依存度の高い横浜市においては、なおさらだ。だからこそ、公共空間のリノベーションは大変重要なテーマで、お金の流れが民間から行政へと変わる。これは質的な変化だから、金額の多寡ではなく、大きな意味を持つ。

私が公共空間の利活用を最初に議会で取り上げたのは2014年の、予算関連質疑のことだった(ブログ:僕たちが考える新市庁舎とリノベーション)。その年の春には北九州リノベーションスクールでお世話になっていた、岡山県問屋町でリノベーションまちづくりを実践し、大きな足跡を残している明石卓巳さんを訪れ、街の作り方を教えてもらった(ブログ:文化と歴史を大切にした理念ある街づくりこそリノベーションだ!)。公共空間をどう再生するかは横浜の都市経営課題を解く上で、最重要テーマだと私は確信し、同年秋の決算審査、政策局において、その可能性について議論した。

 

大阪における「水都大阪」の取り組みで生まれ変わった水辺空間や、かつては財政難により犯罪と麻薬がはびこっていたニューヨークのマディソン・スクエアがニューヨーク市公園局の方針転換により生まれ変わった事例、そして横浜市でも公園の可能性に気づいた設計会社が公園に隣接する場所で素敵なカフェを経営している、都筑区のせせらぎ公園にあるカフェ「fresco」を紹介しつつ、公共空間が持つ、大きなポテンシャルをどう引き出すか、そのためには発想を大きく変えた公民連携が必要だと主張した(ブログ:公民連携と公共空間のリノベーション)。

この時、議会で何人かからヤジが飛んだのも覚えてる。「公務員の仕事を増やすな」みたいな。このスキームを理解している人は少なくとも、当時、日本全体を見渡しても議員ではほとんどいなかった、というよりも、たぶん僕くらいだったと思うので、「的外れだなぁ」と気にもしなかったが、そんな中で、ただ1人、「それ、面白いねー」と反応してくれたのが、自民党の鈴木太郎議員(戸塚区)だった。

 

その後もこのテーマは追い続けた。これからの横浜にとって、極めて大事なテーマであり、かつ地味かもしれないけど、確実に横浜に、社会に大きな、ポジティブな変化をもたらす政策だと確信しているから。2015年夏には吉祥寺の松永先生に「リノベーションによる都市再生の潮流と横浜のこれから」について意見交換を求めて会いに行ったり、DeNAベイスターズがボールパーク構想を発表すれば、面識もなかった球団社長の池田純氏にアポを取って、意見交換にも行った。

 

球団が横浜公園の使い方次第でエリアに活気と賑わいと経済をもたらすことに気づいていることに、私としては本当に勇気付けられた(ブログ:ベイスターズが見せた未来予想図と問われる横浜市の覚悟)。池田社長(当時)から私も色々と話を伺ったので、それまでに培ってきた知見も含めて、予算総合審査ではもう一度、公共空間の再定義、街に価値をもたらす使い方を考え直そう、それこそが公共空間のリノベーションなんだ、ということを議会で訴えた。

形がないものを理解してもらい、つくるのは本当に難しい。しかし、くどいようだけど、私はこのテーマは向こう20年、30年の横浜に住む人々の、次の時代の豊かさを形成する、大切な政策だと信じていて、この3年間、追い続けていた。そして、やっと。2016年春の、そう今年のことだが、予算代表質問で、市長から本音の答弁が出た。普段は用意された答弁書を淡々を読み上げることが多い市長が、公共空間のリノベーションだけは原稿を読まずに、ご自身の言葉で語った。「私もやりたい」。その詳細はブログを読んで頂きたい(ブログ:公共で稼ぐ時代へ)。

 

この市長答弁がキッカケとなって2016年、横浜市は大きく動き始めた。まず市庁舎の屋上を使って、そこに人工芝を貼り、ターフとテントを貼って、アウトドア会議が実現した。秋には市庁舎1Fの芝生広場でも同様にアウトドア会議が開催された。公共空間が持つ可能性を職員にも理解してもらえたと思う。「普段、会議で発言しない職員が積極的に発言して、ビックリしました」とは、ある課長さんの言葉だ。

 

私はこの秋、伊勢佐木にアーティスト支援拠点として「THE CAVE」を立ち上げた。ここは公共空間ではないけれども、なかば公共的な空間にしようと思っている。政策を言うだけでなく、自ら実践してみようと思い、この事業を始めた。収益が出るような事業ではないけれど、自分で実践しているからこそ、見えてきたこともある。

さて。冒頭の日経新聞のニュース。詳細はこれから方針を打ち出した環境創造局に確認しないとわからない部分もある。なぜ、当局がここまで一気に方針を転換したのか。もちろん、それは喜ばしいことではあるのだけど、一方で、これから待ち構えている課題をどこまで認識しているのだろうか、と不安もよぎる。前述したように、公共空間のリノベーションは、財政・まちづくり・教育・福祉・経済・観光と多岐に政策効果が現れる。何よりお金の流れが変わることになるし、「公共に担い手は誰なのか?」という問いと向き合うテーマでもある。

 

これは市民もそうだ。今までように、誰かがやってくれるだろう(多くは、誰か=行政だった)という時代は終わりを告げ、新しい時代になっていく。だから市民も意識を変えていかなくてはならない。

 

だからこそ。すべての公園を対象に公民連携を打ち出すという横浜市の大胆な姿勢は評価するものの、一方で、民間事業者から提案があったときに、横浜市は「軸」を持たないといけない。そのエリアの課題は何か。提案は課題を解く処方箋になっているか。それでいて、民間事業者も収益が上がり、地域にベネフィット(賑わいだったり、憩いの場だったり、あるいは他の何か)を提供できる事業スキームになっているか。

 

これを判断していくのは、並大抵のことではない。かつて、横浜市にあった企画調整局が果たしたような、あるいは都市デザイン室の前進がそうであったような、一本のフィロソフィーが通底した組織と人材が今度、必要になってくるだろう。おそらく、まだ、そこまで考えが至ってない可能性がある。この点は今後、しっかり議論したい。

まだ、形が生み出されたわけではない。それでも。仕組みが整うことの意味は大きい。これで私はもう議会で「公共空間のリノベーションの必要性」を訴える必要はなくなった。仕組みが整えば、あとはそこにいい事例を積み重ねていく実践のフェーズだ。ゼロからイチを生み出すのは難しいけれど、イチを10にするのは、それほど難しい話ではないだろう。いずれにしても、今後が楽しみになってきた。

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